大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和52年(ラ)1019号 決定

抗告人

片山達也

抗告人

阿部勉

主文

本件抗告を棄却する。

抗告費用は抗告人らの負担とする。

理由

〈前略〉

抗告理由書(二)の抗告人片山達也の不服理由について。

記録によれば、債権者は第三取得者である抗告人片山達也に対し昭和五二年一月二六日本件不動産につき抵当権実行の通知を差し出し右通知が昭和五二年一月二七日同抗告人に到達したこと、本件不動産競売申出が昭和五二年二月一八日になされたことが認められるから、抵当権者である債権者宮沢清治は競売申立前に、民法三八一条による抵当権実行の通知をしたけれども右通知が第三取得者に到達した昭和五二年一月二七日から一か月を経過しないのに本件競売申出がなされたことが認められる。しかしながら、抵当権実行の通知は第三取得者に対して滌除権を行使し得る機会を与える趣旨で必要とされるものであるから、第三取得者は単に抵当権実行の通知がなされたのち滌除権の行使ができる一か月の期間経過前に競売の申立がなされたことのみを理由として競売手続の無効を主張することはできず、第三取得者は先ず滌除の意思表示をなし、有効に滌除の申出をなしたことを理由として競売手続の無効を主張すべきであると解するのが相当である。ところが記録によれば、抗告人片山達也は、一か月の期間内に滌除の意思表示をしなかつたことが認められる。さすれば、抗告人片山達也の前記主張も採用の限りではない。〈後略〉

(吉岡進 園部秀信 太田豊)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例